著者は、IBMをはじめとしたものづくりの外資系で活躍し、今は母校である日本の理系大学にて国際競争力を高めるべく活動している。
実際に、国際的な現場で十分な経験をした上で、現時点ではビジネスとは少し距離を置いた学術の世界にいるということで、信頼できそうな情報ソースだと思い、手に取った。
読後、3ヶ月近く経っている今の時点で残っている印象としては、
・IoTはものづくりに優れた日本が世界で勝てる領域。今が勝負のタイミング。
・日本の経営スタンスでイノベーションの弊害になっているものがある。特にソフトウェアエンジニアを評価する必要性がある。
・日本人は、世界を見渡しても、かなり"いい奴"。一番、一緒に働きたいと思える存在。
の3点だった。
それを含め、印象だったポイントを下にメモしておく。
--------------------------------------------------------------------
#アップル製品は、マニュアルはあっても誰も読まないが、直感的に操作できる。動かすだけで気持ちいい。使えば楽しい。持っているだけで満足する。
商品は頑張って使って、その先のメリットを得るのではなく、使うこと自体が楽しいって状況。
これは大事だなって思う。
実際に、習慣化するのものって、その行動に障壁がないものだと思うし、障壁がない=使いたくなるだと思うので。
#海外の経営者は、経営指標であるROEによって、採算が悪い事業があれば投下した資本を引き揚げて、新たな事業に再配分している。
一度始めてしまったことに対して、すぐに辞める決断ができるのは、明確なKPIがあってことだと思う。
それを定めているっていうこと自体が重要だと思う。
#箸の先にセンサーを入れるとする。食事をするとき、どの皿に箸を伸ばしてどのくらいの頻度で口に運ばれたかが、センサーによって測定されます。頻度の高い皿にのっていたものが美味しいと感じるものなのかもしれない。
IoTの具体例として出ていたが、こんな感じで応用先は、これ以外にもたくさんあると思う。
データマイニングが定量的にえられたデータから最適な解を出すものである一方で、IoTはそもそもその材料となるデータを提供する分野。
こういった応用が増えていくであろうことは必然だなと。
#GEのデータレイクとプレディックス
データレイクとは、
「非構造化データ」を管理するのに適した仕組みで、簡単に言うと「多種多様なデータ形式を飲み込んで貯めておけるような広大な領域」です。とのこと。要は、どんな角度で分析でするかが決まっていないため厳密にデータ構造を決めずに、貯めることを目的とした方法とのこと。
確かに、データ分析をする立場から考えても、まずはデータを触ってみないとどういう方向性でデータを貯めるべきかも判断がつかない。
それゆえ、とりあえずデータをためておくという方向性は合っている気がする。
#日本は、30年後には人口が減り、GDPが落ち、国際社会での存在感が薄れる。結果、資源を優先的に売ってもらえなくなる。
今の日本が豊かなのは、GDPの順位が高く、それゆえ資源確保ができるからなんだなって思うと、国際社会での立ち位置って大事だなって思う。
#多国籍企業が地域ごとに最適化を図る経営組織であるのに対して、グローバル企業は地球全体のことを考えて、最適解を一つだけ実行する組織。アップルがその最たる例。
あまり、こういう視点で企業のあり方を見ることはないので、勉強になった。
#日本企業はソフトウェアエンジニアをハードウェアエンジニアと比較して二流社員とみなす傾向がある。故に、下請けに外注するのが一般化する。この企業姿勢では、ソフトウェア企業が育つ土壌はない。
これは、その通りだと思う。
ソフトウェアベースで変えられるものって多いと思うし、そこから得られるメリットも大きいと思う。
それゆえ、その分野のノウハウを自社内でもたないのはとても勿体無い。
#顧客ニーズに応えるアウトカムを優先するSP型経営。Facebookは、知りたい、仲間になりたい、といった、国や人種や性別や経済力に関わらず誰もが抱く欲求を満たすものだった。
内容を忘れてしまったので、他の方のブログより引用
http://d.hatena.ne.jp/nakorake/20151010/1444445891
OE型経営(Operational Excellence): 最優先は規格、差別化は生産手段や形式知、評価項目は品質や生産性、市場焦点は流れを変える、議論はプロセス。
SP型経営(Strategic Positioning): 最優先は顧客ニーズ、差別化は人・知識といった暗黙知、評価項目は創造性、市場焦点は潮目を変える、議論はデザイン(設計)。
#企業経営というのは、お客様、社員、株主という、利益が相反する人たちをすべてハッピーにしなければならない。
"利益が相反する"っていうのが難しいところ。
うまくいかないとき、その前提があることを忘れないことが大事だと思う。
#社員それぞれのスキルや仕事に対する想いは実際にその人にあって、ひざを付き合わせて話をしてみなければわからないことがたくさんある。
自分のことを経営者が知らないように、チームメンバーのことを(チームリーダーである)自分も知らないんだろうなって思う。
無知の知の必要性を考えさせられる。
#海外人材には、ルールや評価は明確にして、目標や報酬、部下への指示も紙に書いて残すくらいの姿勢が必要。日本人とは価値観が違うので考慮する必要。
海外人材がメンバーになったら、確かに考えねばいけない気がする。
日本人だと、頑張っていることが美みたいなところがどうしてもあるから。
#海外の人と仕事する上で大切なのは、英語よりも教養。歌舞伎や能、織田信長と徳川家康の違いなど。
日本の歴史を勉強しなおす必要が出てきそう。。
#チャンスを逃さないためには、目線を高くすること。新しいテクノロジーの登場、ユーザーニーズの変化、経済環境の変化といったことは世の中を高い目線から俯瞰しなければ、視界には入ってこない。
今の時点で、自分に必要な情報が入ってくるような環境を作っておかないと、数年後に損をしてしまう気がする。
#日本人は真面目で、コツコツ働く実にイイヤツです。大震災のときに、暴動も起こさず助け合った姿には世界中が感動した。道に100万円が落ちていたら警察に届けて落とし主に返される。この美徳はいつまでも生き続ける。
これは、日本が誇れる部分だと思う。
日本の教育は、ダメって言われることが多い。特に英語とか。
だけど、こういう道徳心みたいなところは日本の教育の成果なんじゃないかって思う。